消化器内視鏡検査
内視鏡検査は、なんと言っても被験者(患者さま)からすれば、少なか らずおっかないものです。恐怖心は、必ずあるといっていいと思います。内視鏡を挿入することに関する恐れ。それにもし検査の結果、がんと診断されるかもしれないという恐れ。欧米では内視鏡検査を受ける際には、必ずと言っていいぐらい鎮静剤を使用します。当院でも患者さまのご希望に応じて鎮静剤の使用を行わせて頂きます。しかし当院では、上記に述べましたように、医師一人と看護師2人で検査を進めてまいります。3人とも画面ばかり見ているのでなく患者さまの状況を逐一把握しながら検査、治療を安全に施行できるよう努力しております。患者さまに対する声かけが一番の鎮静剤とスタッフ一同考えております。だから必ずしも鎮静剤の使用は必要なものではないと考えています。
現在におきまして消化管(食道、胃、大腸)のがんの治療は、なるべく患者さまの体の負担が少なくなるよう、内科医でもできる小手術におきましても、外科的手術におきましても創意工夫がなされています。もちろん不幸なことに進行がんで発見された場合でも手術と術後の抗がん剤の使用およびその実績は著しい進歩が遂げられています。 消化管の癌の治療におきまして、内科的治療・外科的治療は、日本は世界的に見てもかなりトップクラスにあると考えて頂いていいと思います。 そのなかで内視鏡によるがんの発見、診断のはたす役割が非常に重要なものとなっています。 さて胃がんも大腸がんも進行の早いタイプとあまり進行の早くないタイプのものがあります。 進行の早いタイプのがんは、癌部と周辺の正常部粘膜との境界が不明瞭です。従ってこれらの進行の早い胃がん、大腸がんの内視鏡的診断は難しいと言えます。それに比べて進行の早くないがんは、癌部と正常部粘膜との境界が明瞭で、その内視鏡的な診断も容易と言えます。 当院では胃カメラ、大腸ファイバーいずれも一日二人までの患者さまにしか施行しません。微小病変を見落とさない、という検査施行医のモチベーションを落とさないようにしたいというのが一日にお二人までしかしない理由の一つです。検査のスケジュールを過密にしたくないからです。長々と一日中内視鏡検査をするのは、私もノルマに追われて勤務医時代に行っていましたが癌の発見率の向上にはつながりません。
超早期消化管がんの内視鏡的治療について 日本では、食道がん、胃がん、大腸がんの早期例では、消化器内視鏡的に治療しています。ここで最も注意すべきことは、発見されたがんが、はたして内視鏡的に全て切除することが可能かどうかを慎重に判断する必要があるということです。リンパ節などの他の臓器に転移しているがんは、必ず外科的に切除しなければなりません。内視鏡的に治療するということは、病変部が消化管内(すなわち胃や腸の粘膜内)に限定されている場合にのみ選択される治療と言えます。 食道がんは、発見されたときには既にリンパ節に転移が認められる場合が多いです。また食道がんは、その発生部位により外科だけでなく耳鼻咽喉科や放射線科が同時に集学的に治療するケースが多々経験されます。従って当院では食道がんの患者さまに対しては、大阪大学医学部付属病院、およびこれらの関連施設である兵庫県立西宮病院、大阪府立成人病センターをご紹介することになります。 胃がんにおきましては、病変部が胃粘膜にとどまっている患者さまに対して当院でも内視鏡的に切除することがあります。しかし当院で内視鏡によって胃がんを切除するかどうかの選択は慎重になります。内視鏡的に胃がんを切除した場合切除されたあとの胃の粘膜には、切除後に巨大な潰瘍を形成することになります。従って切除後も絶食、点滴治療などの入院加療する方がベターな場合が多いと言えます。従って胃がんにおきましては入院をお勧めすることが多くなると考えております。勿論、切除法は技術的に難しいものではないので、当院で治療をご希望される方は、内視鏡的切除をさせて頂きます。 大腸がんの内視鏡的切除は当院では、積極的に施行しております。大腸がんの内視鏡的切除は、当院の最も得意とするところであります。進行の早い大腸がんやリンパ節転移が疑われるものは外科的手術を選択してもらわなければなりません。しかしそうではない早期大腸がんは、大腸粘膜にとどまっているものですから、多少大きなものでも(約直径2cm位のものまで)、内視鏡の先端よりスネアーと言うナイフをだして安全に切除します。取り残しのないように切除することが大切です。また切除後の大腸粘膜は、胃の粘膜と違って潰瘍形成することがないので術後の絶食や点滴治療などの必要がありません。その意味で大腸がんの内視鏡的切除は、日帰り入院による治療が可能といえます。安全には、十分留意して治療にあたらせて頂きます。 しかしこの治療は、やはり手術に準じて行わなければなりません。1000人に一人〜三人の頻度で切除後の大腸の粘膜から出血がおこりえます。従って治療を受けて日帰り入院にて帰宅された患者さまにおきましては、異変を感じられたときには、私の携帯電話に直通で連絡して頂きます。万が一出血が術後に起こった場合に内視鏡により速やかに緊急止血を行います。幸いなことに当院では、切除後の出血もほとんど起こしていません。輸血が必要な出血は、当院では未だ経験はありません。今後も医原性の事故は、決して起こらないよう慎重に治療を進めてまいりたいと考えております。